大学による無期転換阻止の現状について

中央大学のように非常勤講師の講師給に対して7%の賃上げが達成されるといった賃金についての成果はある一方で、無期転換については大学の姿勢は頑なであると言わざるをえません。無期転換は、5年経てば無期雇用に転換できるという、労働契約法に定められている権利ですが、現状では、労働契約法の趣旨を省みず、無期転換を脱法的に運用している大学が目立ちます。

つい先日も、文京学院大学と団体交渉を行ないましたが、大学は、2014年4月1日以降に働き始めた非常勤講師に対して、任期法という無期転換の例外で10年経ないと無期転換できないルールを適用すること、10年で雇い止めにすることを就業規則において定めたと主張して、当組合が求める5年での無期転換を認めようとしませんでした。団体交渉では、任期法が適用される以前に働き始めた非常勤講師と2014年4月1日以降に働き始めた非常勤講師との間に業務内容について本質的にどのような違いがあるのかといった質問をしましたが、大学は回答を拒否する答弁を繰り返しました。文京学院大学は、このような不誠実な対応をとってまで無期転換を阻止したいようですが、他大学では新たな動きがあるようです。

日本大学は、これまで5年で一律に非常勤講師を雇い止めにする運用を続けており、無期転換を阻止する姿勢を続けていました。しかし、この度、日大は来年度以降の就業規則変更案を示し、非常勤講師を5年で雇い止めにするという部分を削除し、5年で無期転換可能な制度に切り替えることを明らかにしました。「5年で雇い止めにすることで優秀な非常勤講師の確保が困難になっている事情があるからだ」と日大の人事担当者は当組合との団交で率直に語ってくれましたが、日本の大学が抱えている大きな問題の一つである無期転換問題において、分水嶺を越えた象徴的な出来事といえます。ただし、当組合はすでに5年で雇い止めにした非常勤講師の復職をめぐって日本大学と裁判を続けていますが、この裁判についていえば、今後の先行きはなお不透明です。

当組合では、無期転換権の行使を阻止する大学に対して、何とか無期転換を認めるよう係争を続けていますが、多くの非常勤講師が雇い止めを前にして何もできないまま生活の糧を失っているのが実態です。日大の就業規則変更は、そうした実態を改善する一歩になったといえますが、上述した文京学院大学の例のように、いまだ無期転換について従来の考えを改めない大学があるのも実情です。ただ、非常勤講師の無期転換を阻止することが大学にとってもメリットがないことを考えれば、今後、無期転換を脱法的に運用している大学が考えを改めるようになるのは必然的な流れといえるかもしれません。