専修大学において、平成元年から有期の労働契約を締結してドイツ語の非常勤講師として勤務してきた小野森都子さんが、労働契約法18条に基づき無期労働契約への転換を申し込んだところ、専修大学が科学技術イノベーション活性化法(いわゆるイノベ法)の適用を主張し、無期労働契約への転換を認めなかったことから、訴訟となった事件です。
判決は、イノベ法15条の2第1項1号の「科学技術に関する研究者」について、同条の立法趣旨、学校教育法及び大学設置基準との整合性、任期法との関係、イノベ法15条の2第1項2号との関係といった点から、有期労働契約を締結して業務に従事している大学等において、「研究開発及びこれに関連する業務に従事している者であることを要する」と解釈しました。
その上で、大学においてドイツ語の授業、試験、及び、これらの関連業務のみに従事している原告は、イノベ法15条の2第1項1号の「研究者」に該当しないとして、原告の有期労働契約について、無期労働契約への転換を認めました。
裁判の結果を受けて、原告の小野さんは次のようにコメントしています。
「訴えたのは、人の使い捨てを許さないという思いからでした。大学がこんなことをしていると、若い人たちが大学を職場として選ばなくなります。人を育てる教育機関が、こんなことをしていいのかという思いで、教育に携わるものとして争わなければ無責任であると考え、裁判に臨みました」
今回の専修大学の裁判では、多くの非常勤講師及び任期付きの専任教員に関わる重要な判決が出ました。この判決を当組合だけの手柄にするつもりはありません。非常勤講師及び任期付きの専任教員が在籍している組合に向けて、組合という垣根を越えた連帯を呼びかけたいと思います。
5年超で無期転換しないのは違法 専修大語学講師めぐり東京地裁判決(朝日新聞)
無期転換特例 非常勤講師は対象外 「研究者」要件を示す 東京地裁(労働新聞)
「語学の非常勤講師」は研究者か? 大学教員の「無期転換」、翻弄される有期労働者たち(弁護士ドットコムニュース)