無期転換権を行使して、雇い止めされなかった非常勤講師のケース

非常勤講師のAさんは、大学から2021年3月末をもってAさんを雇い止めするとの通知を受け取りました。その大学に6年間勤めていたAさんは、突然の通知に驚くとともに、来年度以降に大幅に給料が減ってしまうことに大きな不安を覚えました。そこで、来年度の雇用を継続できないか当組合に相談に来られました。

無期転換権の申込み

Aさんは、6年間勤めていたので、当組合は無期転換を申し込むことを提案しました。無期転換ルールとは「有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルール」のことです。

参照:はじまります!無期転換ルール(厚労省)

Aさんの雇用は、毎年更新されて通算6年で、5年を超えているため、無期転換権を有することになります。期間の定めのない労働契約に転換されると、使用者は、契約期間満了を理由とする雇い止めを行うことができなくなります。

申込書の作成から提出まで

Aさんは、まず無期転換権を行使のための申込書を作成しました。申込書の雛形は、厚労省が下記のように示しています。

参照:「無期転換ルール」とは(厚労省)

申込書を作成したら、人事課などの担当窓口に提出して、無期転換の申込が完了します。Aさんの場合は、雇い止め通告がされていたので、当組合を通じて提出しました。また、Aさんの場合、権利を有しているので、大学からの合意がなくても、申し込みをした時点で、無期転換が成立します。

大学は雇い止めの取り下げ

Aさんが無期転換申込書を提出すると、すぐに大学より連絡があり、雇い止めの通知を取り下げ、翌年度も雇用を継続することを約束しました。このように、無期転換ルールを知らなかったり、知っていても権利を行使しなかったりすると、権利を有していても、ケースによっては、雇い止めされることがあります。雇い止めされる前に、無期転換の申し込みをすることが重要です。

申し込むと、不利益になる?いえ、利益になります

なかには、無期転換ルールを知っていて、無期転換権を有していても、申し込みをしない非常勤講師の方もいます。そのような方にお話をうかがうと、申し込んだことで、専任教員に目をつけられて、結果的に不利益を被るのではないかと不安に思っていらっしゃる方もいるようです。そんなことはありません。当然の権利ですし、長く働きたいと思っていることの表明にもなります。無期転換ルールは、労働契約法18条で定められている、労働者の権利の一つです。むしろ、無期転換をしていないと、Aさんの場合のように、職を失ってしまうリスクが高まります。もしも不安な場合は、労働組合に加入して、組合を通じて申し込むということもできます。